国旗といえば、横長。
日の丸も、星条旗も、フランスの三色旗も、みんな横に長い長方形ですよね。あれは世界共通の決まりなのだろうと、なんとなく思っていました。
2つだけ、正方形があります。スイスとバチカン市国です。
戦場で生まれた形だった
スイスの赤地に白十字。あの正方形は、軍旗の名残です。
さかのぼると1339年、ラウペンの戦いにたどり着きます。寄せ集めの兵たちが味方どうしで刺し合わないよう、鎖かたびらに白い十字を縫い付けた。これが最初の記録とされています。
当時、軍旗といえば正方形でした。1840年に歩兵隊の旗が標準化され、1848年の連邦憲法で国のかたちとして定まります。つまり戦場の都合が、そのまま国旗の形になったわけですね。
ちなみに、よく聞く説明があります。4本のアームは4つの公用語の団結を表している、というもの。これについてスイスの公共放送は、歴史的根拠がないとはっきり書いていました。
もうひとつ余談を。スイス初の公式な国旗は、実は緑・赤・黄の三色旗でした。1798年、ナポレオンの圧力下で作られたもの。現在のマリの国旗と同じ配色です。こちらは5年で消えました。
「正方形」と法律に書かれたのは2017年
ここが意外でした。
1889年、連邦政府は国章を法律で定めています。ただし書かれていたのは十字の形だけ。縦棒と横棒の長さが等しく、それぞれ幅より6分の1だけ長い、という規定でした。
旗そのものが正方形であるべきだとは、書かれていなかった。
では何だったのか。ただの慣習です。みんながそうしているから、そうしていた。
明文化されたのは2017年。紋章などの保護に関する連邦法が改正され、「スイス国旗は、正方形の地にスイス十字をあしらう」と定められました。
600年以上その形で使われてきて、法律になったのはつい最近。習慣のほうが、法律よりずっと先に走っていたわけですね。
おまけ:国の外に出ると、四角でいられない
正方形で通せるのは、国内だけでした。
- 公海上を行くスイス船籍の船の旗 … 長方形
- スイスに登録された航空機の国章 … 正方形ではない
- オリンピックで掲げられる国旗 … 長方形
船のほうは1941年4月9日に導入された商船旗です。戦時中に攻撃されるのを避けるため、国際基準に合わせた形にしたもの。
オリンピックはもっと最近で、2004年のアテネ大会からです。国際オリンピック委員会が、参加国の旗をすべて同じ長方形にそろえると決めました。どれかひとつが目立つのは、国家間の平等という精神に反するから、という理由です。
ところが、三角形を2つ重ねた独特な形のネパール国旗は、例外として認められています。スイスだけが引き伸ばされている。
スイスの記者も、この点はひとこと書き残していました。
明日、こう話せる
オリンピックの中継や、国旗が並んでいる写真を見たときが出番です。
「正方形の国旗って、世界にいくつあると思う?」
たいてい「正方形なんてあるの?」と返ってきます。
「2つだけ。スイスとバチカン。スイスのは昔の軍旗の形がそのまま残ったんだって」
そして最後にこれを足します。
「でもオリンピックだと長方形に引き伸ばされてるよ。全部の国旗を同じ形にそろえる決まりだから」
次の大会の入場行進で、確かめられます。四角いはずの国が、四角くないまま歩いてくるはずです。
