消しゴムに巻いてある、あの紙のケース。
使っているうちに端が破れて、そのうち邪魔になって外してしまう。あれはデザインと値札のためのもので、実用的な意味はない。私はそう思っていました。
あれは隔離材です。外して筆箱に放り込むと、中のプラスチックが溶けます。
消しゴムは、わざと柔らかくしてある
まず、消しゴムが何でできているか。
いわゆるプラスチック消しゴムの主成分は、ポリ塩化ビニルです。ただし、この樹脂はそのままだとかなり硬い。硬いままでは、文字を消せません。
そこで可塑剤(かそざい)という材料を混ぜます。プラスチックを柔らかくするための成分です。
これを配合することで、ちょうどいい柔らかさになり、消しカスも出るようになる。あの消し心地は、可塑剤が作っています。
可塑剤は、隣のプラスチックにも移る
問題はここからです。
可塑剤には、他のプラスチックに触れると染み込んでいく性質があります。トンボ鉛筆の公式サイトには、こう書かれています。
「消しゴムに含まれている可塑剤は、プラスチックにふれると溶けて融合してしまう」
つまり、隣にあるプラスチックまで柔らかくしてしまう。
定規や下敷き、筆箱の内側。消しゴムが長く接していた部分だけがベタつき、表面がゆがみ、くっついて離れなくなる。
| やりがちなこと | 起きること |
|---|---|
| ケースを外して筆箱に入れる | 内側が溶けてベタつく |
| 下敷きの上に置いたまま | 接触面がくっつく |
| プラスチックの定規と一緒にしまう | 定規の表面がゆがむ |
小学生のころ、筆箱の底がなぜかベタベタしていた記憶はありませんか。あれはほぼ確実に、これです。
紙のケースは、その接触を物理的に断つためのものだったわけですね。ただの包装ではなく、仕切りでした。
おまけ:消しカスでも同じことが起きる
もう一段、やっかいな話があります。
同じくトンボ鉛筆の注意書きに、「消しカスも同様にプラスチックを溶かすことがあります」とあります。
消しカスにも可塑剤は入っているので、当然といえば当然です。
筆箱の底にたまった消しカスを、なんとなく放置している人は多いと思います。私もそうでした。あれは掃除をさぼっているというより、溶かす材料を敷き詰めている状態に近い。
今日このあと、筆箱を一度ひっくり返してみてください。
明日、こう話せる
文房具を使っている人が近くにいれば、そのまま使えます。
「消しゴムの紙のやつ、外して使ってない?」
たいてい「じゃまだから外してる」と返ってきます。
「あれ、外すとまずいんだって。消しゴムって柔らかくするために可塑剤ってのが入ってて、それが他のプラスチックに移って溶かしちゃうらしいよ」
ここで相手はだいたい、筆箱の底を思い出します。
「消しカスでも同じことが起きるって、メーカーが書いてる」
そう足すと、その場で筆箱を掃除しはじめる人がいます。実害のある雑学は、行動が変わるのが早いですね。
