横断歩道の絵を描いてください、と言われたら。
たぶん、白い横棒を何本か並べて描くと思います。実際、いま道路に引かれているのはその形です。
ところが少し古い写真を見ると、様子が違います。横棒の両端に、縦の線が通っている。 はしごのような形をしています。
これ、1992年を境に静かに消えました。
1992年11月から、新しい形に切り替わった
かつての横断歩道は「はしご型」と呼ばれる形でした。横棒の左右を縦線でつないだ、まさに梯子です。
1992年11月以降、新しく設置するものや、補修するものについては、縦線のない「ゼブラ型」を使うことになりました。
一斉に塗り替えたわけではありません。寿命が来たものから順に、静かに置き換わっていったのです。だから多くの人は、変わった瞬間に気づいていません。私も言われてから古い写真を探して、ようやく「たしかにはしごだ」と分かりました。
縦線をやめた理由は、ひとつではなかった
なくした理由は複数あります。
- 水はけが良くなり、路面が滑りにくくなる
- 縦線は車に踏まれて消えやすく、そのぶん補修の手間がかかっていた
- 塗る量が減るので、工事の時間が短くなり渋滞を減らせる
- 線が少ないほうがすっきりして、街の景観に馴染む
さらに、白い横棒だけのほうがドライバーの目に浮き出て見えるという利点も挙げられています。線を減らしたのに視認性が上がった、というのが面白いところです。
減らして良くなった。こういう例は、意外と多くありません。
おまけ:はしご型は、まだ生き残っている
全国一斉の切り替えではなかったので、いまでも古いはしご型が残っている場所があります。
交通量の少ない道や、私有地の中の通路など。塗り直す機会がないまま、30年以上そのままになっているわけです。
見つけたらちょっとした発見です。街の中に残った、時代の切れ端のようなものですから。
明日、こう話せる
横断歩道を渡っているときが、いちばん自然です。
「横断歩道って、昔は両端に縦線があってはしごみたいな形だったの知ってる?」
相手が「そうだっけ」となったら、こう続けます。
「1992年から縦線なしに変わったんだって。水はけが良くて滑りにくいし、塗る量が減るから工事も早い」
とどめに「たまに古いはしご型が残ってるから探してみて」と言うと、そのあとしばらく足元を見ながら歩くことになります。
