鉛筆の芯は、どうやって木の中に入っているのか。
細長い穴を開けて、そこに芯を通しているのだろう。私はずっとそう思っていました。あんなに細くて長い穴を、よく真っすぐ開けられるものだと感心していたくらいです。
通していません。挟んでいます。
溝を掘った板で、芯をはさむ
鉛筆の材料になるのは、スラットと呼ばれる木の板です。
三菱鉛筆の説明によれば、長さ185ミリ、幅70ミリ、厚さ5ミリ。手のひらに乗るくらいの、薄い板ですね。
工程はこうなっています。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 板に半円の溝を9本掘る |
| 2 | 溝に接着剤を塗り、芯を並べて置く |
| 3 | 同じく溝を掘ったもう1枚の板を重ねる |
| 4 | 圧力をかけて、ぴったり貼り合わせる |
上下から挟まれた芯が、ちょうど円柱の穴に収まった形になります。
穴を開けたのではなく、半分ずつの溝を合わせて穴にした。そう聞くと、あの真っすぐさにも納得がいきます。
そして溝は9本。つまり1回貼り合わせるだけで、9本分がまとめてできるわけですね。
考えてみれば、17センチを超える細い穴を、木に真っすぐ開けるのは大仕事です。しかも1本ずつ。溝なら表面を削るだけで済みますし、芯を置くのも目で見ながらできます。
難しいことをやめて、簡単なことを2回に分けた。うまい逃げ方だと思います。
削って、切り離して、色を塗る
貼り合わせたあとは、削りの作業です。
まず上の面を鉛筆の形に削り、次に下の面を削って、1本ずつ切り離していきます。板から鉛筆が生まれるというより、板を鉛筆の形まで彫り落としていくイメージに近い。
六角形も丸も、この段階の削り方で決まります。
そのあと塗料を何度も重ね塗りし、両端を切って長さをそろえ、硬度の刻印を入れて完成です。
ちなみに使われている木は、インセンスシダーというアメリカ産のヒノキの仲間。削りやすさと、割れにくさで選ばれています。
おまけ:HとBの違いは、粘土の量
もうひとつ、芯そのものの話です。
鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を水で練り合わせ、およそ1000度から1200度で焼き固めたものです。
そして硬さを決めているのは、粘土の割合でした。
- 粘土が多い → 硬くて、書いた線は薄い(H系)
- 黒鉛が多い → やわらかくて、線は濃い(B系)
HとBは、まったく別の材料ではありません。同じ2つの材料の、混ぜる比率が違うだけ。
硬さと濃さが必ずセットで変わるのも、これで説明がつきます。硬い芯で濃く書くことはできない。配合がひとつだからですね。
明日、こう話せる
鉛筆を使っているときや、子どもの文房具を見ているときに使えます。
「鉛筆の芯って、どうやって入れてると思う?」
たいてい「穴に通してるんじゃないの」と返ってきます。私もそう思っていました。
「違うんだって。溝を掘った板を2枚用意して、芯を挟んで貼り合わせてる。1回で9本分できる」
そして最後にこれを足します。
「HとBの違いも、粘土の量なんだよ。粘土が多いと硬くて薄い、黒鉛が多いと柔らかくて濃い」
今度鉛筆を手に取ったら、芯を通した棒ではなく、2枚の板の合わせ目だと思って見てみてください。
