国際宇宙ステーションに、洗濯機はありません。
水が貴重だから。そこまでは想像がつきますよね。
ところがJAXAが挙げている理由は、水だけではありませんでした。
理由は4つあって、最後が意外だった
JAXAのよくある質問に「宇宙で洗濯はできますか」という項目があります。
挙げられている理由がこれでした。
- 水が貴重である
- 洗った後の汚水処理も大変
- 水が飛び散るような洗濯機は危険
そしてもうひとつ。たとえ水が漏れない構造にできたとしても、ステーションに有害な振動を発生する機械は使えないのだそうです。
言われてみると、なるほどです。無重力で実験をしている場所に、ガタガタ揺れる箱は置けません。
ではどうするのか。使い捨てです。着終わった衣類は、他の廃棄物と同じように補給船にしまわれます。
枚数と日数が、きれいに半年ぶん
JAXAには、もっと具体的な資料がありました。
「きぼう」の有償利用制度で公開されている、長期滞在する日本人宇宙飛行士向けの船内被服の搭載計画です。星出彰彦飛行士の滞在に向けたものですね。
品目ごとに、搭載枚数と着用日数が決まっています。
- 半袖Tシャツ:26枚、1枚あたり7日着用
- 半袖ポロシャツ:8枚、1枚あたり15日着用
- 下着:65枚、1枚あたり3日着用
- 靴下:26足、1足あたり7日着用
- 長ズボン:6枚、1枚あたり30日着用
- セーター:2枚、1枚あたり90日着用
- 運動靴:ミッション期間中1足
セーターが2枚で、1枚90日。驚きますよね。
ここで気づいたことがあります。枚数と日数を掛けてみてください。
26枚×7日=182日。65枚×3日=195日。6枚×30日=180日。2枚×90日=180日。
どれも半年ぶんです。滞在期間から逆算して、枚数が決められているわけですね。服は消耗品として計算されている。
なお、先ほどのよくある質問には「下着は毎日」と書かれていて、この表の3日とは食い違います。時期や運用で変わってきたのかもしれません。
おまけ:服への要求が、やけに具体的
同じ資料には、品目ごとの「機能要求」も載っていました。これが読み物として面白かったです。
- 靴下:足裏に滑らない加工。甲部分を厚めにする
- 長ズボン:面ファスナーを左右腿部に3本ずつ。ポケットには小物や工具が1〜2本入るとよい
- 運動用上衣:数日着用後もべたつかない使用感が維持できると良い。袖なし(タンクトップではない)
足裏に滑り止め、腿に面ファスナー。無重力で体を固定したり、物を留めたりする必要があるからでしょうね。そしてほぼ全品目に「抗菌・防臭」が付いています。
もうひとつ。この船内被服は、企業が提案できます。
「きぼう」有償利用制度として、自社の被服をステーションに打ち上げる提案を受け付けているんです。軌道上での着心地を地上の製品開発に活かしてもらう、という狙いだそうです。
宇宙飛行士の靴下が、公募で決まることもある。そう考えると、少し身近になりませんか。
明日、こう話せる
洗濯物をたたんでいるときや、宇宙の話題が出たときが出番です。
「宇宙ステーションに洗濯機がないの、理由わかる?」
たいてい「水がないから」と返ってきます。半分正解です。
「水の問題もあるけど、揺れる機械が置けないんだって。実験の邪魔になるから。だから服は使い捨て」
そして最後にこれを足します。
「半年の滞在でセーター2枚なんだよ。1枚を90日着る計算。下着は65枚持ってく」
数字がいちいち具体的で、妙に生活感がある話です。
