ものは温めると膨らむ。
理科で習ったとおりです。夏の線路が伸びるのも、瓶のふたをお湯で温めると開くのも、同じ理屈ですよね。
ゴムは、逆でした。温めると縮みます。
伸ばすと熱くなり、縮めると冷える
この現象には名前がついています。グー・ジュール効果。
辞書にはこう書かれていました。ゴムが断熱的に伸びると発熱し、縮むと冷却する現象。そして一言、「これは通常の固体とは逆である」と。
発見は古く、1805年。グーという人が気づき、1859年にジュールが詳しく調べました。
実際に測った記録もあります。大阪大学の研究センターの報告によれば、輪ゴムの原料である加硫天然ゴムをおよそ2倍の長さに引き伸ばしたところ、直後に0.2度ほど温度が上がったそうです。
その後は周囲に熱が逃げてゆっくり冷え、元の長さに戻すと、伸ばす前とほぼ同じ温度に落ち着く。きれいに行って帰ってくるわけですね。
0.2度と聞くと微々たるものですが、自分で確かめられます。
輪ゴムを唇に当てて、勢いよく伸ばしてみてください。ほんのり温かく感じます。そのまま唇に当てたまま縮めると、今度はひやりとする。道具も火も要りません。
なぜ、金属と逆になるのか
分かれ目は、何が伸び縮みしているかでした。
金属の場合、熱で原子の振動が激しくなり、原子どうしの間隔が広がります。だから温めると伸びる。素直な話です。
ゴムは構造から違います。細長い分子が、絡まり合った毛糸玉のような状態で入っている。
引き伸ばされたゴムの中では、その分子がぴんと張った窮屈な形をとらされています。逆に縮んだ状態なら、丸まったり折れ曲がったり、好きな形になれる。
自由な形のほうへ戻ろうとする。これがゴムの縮む力の正体で、エントロピー弾性と呼ばれています。
ここまで分かれば、答えは出ますね。温度を上げると分子の運動が激しくなり、自由な形へ戻ろうとする勢いも強くなる。だから縮む力が増すわけです。
力の源が「結合」ではなく「散らかりたがる性質」だった。金属と逆になるのも当然でした。
なお、はっきり縮むのは十分に伸ばした状態のときです。たるんだ輪ゴムを温めても、見た目には変わりません。
おまけ:輪ゴムと風船では、数字が違う
同じ研究では、輪ゴムとゴム風船の素材も比べています。
結果、同じだけ引き伸ばしても、輪ゴムのほうが変化が大きいと出ました。理由は、分子どうしをつないでいる架橋の密度が違うから。
同じ天然ゴムでも、つなぎ方の密度で性格が変わるんですね。
ちなみにゴムがこれほど弾むようになったのは、1839年にグッドイヤーが加硫法を見つけてからのこと。グーの発見の、34年もあとでした。
まだよく伸びないゴムで、あの不思議に気づいていたことになります。
明日、こう話せる
輪ゴムが手元にあるときが出番です。
「ものって温めると伸びるでしょ。ゴムは逆なんだよ」
たいてい「そんなわけない」と返ってきます。
「伸ばしたゴムを温めると縮むの。分子が散らかった形に戻りたがる力で縮んでるから、温めるほど強くなる」
そして、その場で試してもらえます。
「輪ゴムを唇に当てて、ぱっと伸ばしてみて。あったかくなるから」
その場に輪ゴムさえあれば成立する、手軽な持ちネタです。
