キリンの首は、なぜあんなに長いのか。
骨がたくさん詰まっているのだろう。10個か、20個か。少なくとも人間よりは多いはずだ。私はそう思っていました。
7個です。人間とまったく同じ数です。
数ではなく、1個の長さが違う
哺乳類の首の骨は、基本的に7個と決まっています。
ネズミも、ゾウも、キリンも、人間も。体の大きさがこれだけ違っても、そこだけは共通しているというのが面白いところです。
では何が違うのか。1個の大きさです。
| 首の骨の数 | 1個の長さ | |
|---|---|---|
| 人間 | 7個 | 数センチ程度 |
| キリン | 7個 | 28センチ以上とされる |
同じ7個を、ひたすら引き伸ばした。それがあのシルエットの正体です。
ちなみに鳥は事情が違って、たとえばフクロウの首の骨は14個あります。首を長くしたいとき、哺乳類は数を増やせなかったということですね。
8番目の「首の骨」が見つかった
ここからが本題です。
2016年、東京大学の郡司芽久氏と遠藤秀紀教授が、キリンの体についてある発見を発表しました。
8番目の「首の骨」があったというのです。
見つかったのは、第一胸椎という骨でした。名前のとおり、本来は胴体の一部です。ところがキリンでは、この骨が首の骨のように動いていた。
秘密は肋骨のつき方にありました。第一胸椎には左右に肋骨がついていますが、キリンではそのつく位置がわずかにずれていて、骨の動きを邪魔しない構造になっていたのです。
この1個が加わることで、首の可動範囲は約50センチも広がります。
高いところの葉を食べる。低いところの水を飲む。正反対の姿勢を両方こなせるのは、この8番目の骨のおかげだと考えられています。
おまけ:数は増やさず、使い方を変えた
この話のいちばん面白いところは、解決の仕方です。
哺乳類には「首の骨は7個」という強い縛りがあります。キリンは、その枠を破りませんでした。
代わりにやったのが、隣にある胴体の骨を、首として使い始めることでした。
数は増やさない。関節のつくりだけを少し変えて、動く範囲を広げる。ルールは守ったまま、運用でしのいでいるわけですね。
生き物の進化というと大胆な作り変えを想像しますが、実際はこういう、ぎりぎりの工夫が多いのかもしれません。
明日、こう話せる
動物園の話や、キリンの映像を見たときに使えます。
「キリンの首の骨って、何個あると思う?」
たいてい「20個くらい?」と返ってきます。
「7個。人間と同じ。哺乳類はだいたい7個って決まってて、キリンは1個が28センチ以上あるだけなんだよ」
そして最後にこれを足します。
「しかも最近、胴体の骨が1個、首として動いてるのが見つかった。おかげで首の可動範囲が50センチ広がってるらしい」
同じ7個でここまで違う。体の設計というのは、意外と融通がきかないものだと分かります。
