「レトルト」は食品でも袋でもなく、殺菌する釜の名前だった

「レトルト」は食品でも袋でもなく、殺菌する釜の名前だった

レトルトカレー、レトルトごはん、レトルトのパスタソース。

では「レトルト」とは何を指す言葉なのか。あの銀色の袋のことか、それとも特別な加工のことか。私はなんとなく、袋のほうだろうと思っていました。

釜です。工場に置いてある、大きな機械の名前です。

目次

もとは、理科室にありそうな器具

レトルトはオランダ語から入ってきた言葉です。

辞書を引くと、まず出てくるのは実験器具のほう。蒸留や乾留に使う、ガラスや金属でできた道具を指します。加熱するものを入れる球状の容器に、生成物が出ていくための管が斜めに付いた形です。

理科室の棚にありそうな、あの手のものですね。

この器具の名前が、そのまま加熱するための釜を指す言葉として使われるようになりました。

食品業界では、圧力釜のこと

食品の世界でレトルトと言えば、加圧加熱殺菌を行う装置のことです。要するに巨大な圧力鍋

日本缶詰びん詰レトルト食品協会の説明によれば、この釜を使って120度以上で4分以上の高温高圧殺菌を行います。先に密封してから、袋ごと釜に入れて加熱する。この順番が大事なんですね。

袋は光も空気も通しません。中身は密封されたまま殺菌されている。だから保存料に頼らなくても、常温で長く置いておけるわけです。あの日持ちのよさは、薬品ではなく釜と袋の仕事でした。

言葉としては、こんな三段構えになっています。

使われる場面レトルトが指すもの
化学の実験蒸留に使うガラス器具
食品工場加圧加熱殺菌をする釜
スーパーの棚その釜を通した食品

つまり「レトルトカレー」を正直に言い換えると、「加圧加熱殺菌釜カレー」になります。

カレーでもなく、袋でもなく、通した機械の名前を名乗っている。工場の設備名がそのまま商品名になっている食べものは、なかなか珍しいと思います。

おまけ:世界初の一般向けレトルト食品は、ボンカレー

もう一段あります。

袋入りのレトルト食品を、一般の人向けに世界で最初に売り出したのは日本です。1968年2月に大塚食品が発売したボンカレーがそれにあたります。翌年には全国で売られるようになりました。

つまり、レトルトカレーというジャンル自体が日本発ということですね。

ちなみに「レトルトパウチ」は英語でも retort pouch と言います。カタカナだから和製英語だろう、と思われがちですが違います。そのまま通じる言葉です。

明日、こう話せる

レトルトカレーを温めているときが、いちばん自然です。

「レトルトって何のことか知ってる?」

たいてい「この袋のことでしょ」と返ってきます。ここが狙い目です。

「釜の名前なんだって。工場にある殺菌用の圧力釜。それを通したからレトルト食品」

そのあと、こう足します。

「だから直訳すると『殺菌釜カレー』。あと、袋入りのレトルト食品を世界で最初に売ったのはボンカレーらしいよ」

食べる直前の話としては色気がありませんが、その分よく覚えてもらえます。

参考

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「どうせヒマなら」を運営している市田健人(いちだ けんと)です。東京でWeb制作とデザインの仕事をしながら、ベースケント合同会社(BASE KENT)の代表をしています。専門家ではありません。気になったことを調べて、裏が取れたものだけを書いています。定説が定まっていない話は「諸説あります」と正直に書く方針です。3分で読めて、誰かに話したくなる話を毎日ひとつ。暮らしとWeb制作の実用情報を扱う「Ex-TORANOMAKI」も運営しています。

目次