片方の鼻だけ通りが悪い。
風邪でもないのに、そういう日がありますよね。鼻の形のせいかな、くらいに思っていました。
左右交互に、つまっています。それが普通の状態です。
鼻の中で、片方ずつ膨らんでいる
鼻の穴の奥には、鼻甲介(びこうかい)という突起があります。この表面をおおっている組織が、血液を集めて膨らんだり、しぼんだりしている。
自律神経が、これを片側ずつ切り替えているんです。
片方が膨らんで狭くなっているとき、反対側はしぼんで広くなっている。だから鼻全体としての通りやすさは、ほとんど変わりません。気づかないのは、そのためですね。
この現象、記録としては古くからあります。
- 1895年 … ドイツの医師リヒャルト・カイザーが報告
- 1927年 … 正常な人の約80パーセントで見られると報告される
120年以上前から知られていた、ということになります。
確かめ方は簡単です。片方の鼻を指で押さえて、鼻から息を吐いてみてください。反対側も同じように。どちらかが通りにくいはずです。
なお、これは病気による鼻づまりとは別のものとされています。
寝ている間は、周期が倍以上に伸びる
切り替わる間隔は、どれくらいなのか。
2016年にイスラエルの研究チームが発表した論文に、くわしい数字が載っていました。右利きの健康な33人に、24時間つけっぱなしの計測をした研究です。
- 左の鼻が優位な時間 … 平均2.63時間
- 右の鼻が優位な時間 … 平均2.17時間
わずかに左のほうが長いという結果でした。
もっと差が出たのが、起きているときと寝ているときの比較です。
- 起きているとき … 平均2.02時間
- 眠っているとき … 平均4.5時間
寝ると周期が倍以上に伸びる。夜のあいだは、鼻ものんびりしているようですね。
もう一つ。横向きに寝ると、下になった側の鼻がつまることも確かめられています。寝苦しくて寝返りを打ったあと、鼻の通りが変わった気がしたなら、それは気のせいではなかったわけです。
おまけ:左右の鼻は、違うにおいを嗅いでいる
ここまで読んで、ひとつ疑問が浮かびませんか。わざわざ片方を狭くして、何の得があるのか。
答えのひとつは、においにありました。
1999年、スタンフォード大学の研究チームがネイチャー誌に報告しています。タイトルを訳すと「世界は、それぞれの鼻の穴に違うにおいがする」。
においの分子には、受容体とすぐ結びつくものと、時間がかかるものがあります。空気が速く流れる側では前者が、ゆっくり流れる側では後者が拾いやすい。
つまり流れの速い鼻と遅い鼻を1つずつ持つことで、嗅ぎ分けられる範囲が広がる。左右の鼻は、脳にわずかに違うにおいの像を送っているわけですね。
片方ずつ休ませているように見えて、きちんと役割を分けていました。
明日、こう話せる
鼻がつまっている人がいるときや、花粉の話題が出たときが出番です。
「鼻って、健康でも片方ずつつまってるの知ってる?」
たいてい「それ、ただの鼻づまりじゃないの」と返ってきます。
「違うんだよ。自律神経が左右を切り替えてて、2時間半くらいで入れ替わる。合計の通りは変わらないから気づかないだけ」
ここで相手に試してもらえます。片方ずつ押さえて、息を吐いてもらう。
そして最後にこれを足します。
「しかも左右の鼻で、においの感じ方が違うらしいよ。ネイチャーに論文が出てる」
その場で全員が自分の鼻を触りはじめる、強い持ちネタです。
