この記事を読んでいるうちに、あくびが出るかもしれません。
もう出ましたか。あくびという字を見ただけで、口の奥がむずむずしてくる。書いている私も、さっきから何度か出ています。
あくびがうつるのには、順番があります。相手との近さで決まるんです。
うつりやすいのは、家族から
2011年、イタリアのピサ大学の研究者ノルシアとパラージが、大人のあくびを1年にわたって観察しました。
誰のあくびが、誰にうつるのか。記録していくと、はっきりした傾向が出てきます。
| 相手 | うつりやすさ |
|---|---|
| 家族 | いちばんうつりやすい |
| 友人 | その次 |
| 知人 | さらにその次 |
| 見知らぬ人 | いちばんうつりにくい |
しかも、うつる回数が多いだけでなく、うつるまでの時間も短かったそうです。
性別や国籍では差がつきませんでした。決め手になっていたのは、気持ちの上での近さだけ。
あくびが、人間関係の距離を測るものさしのように働いていたわけですね。
オオカミでも、イヌでも起きる
あくびの伝染は、人間だけのものではありません。
チンパンジーなどの霊長類、飼い犬でも確認されています。そして2014年、東京大学のテレサ・ロメロ氏らが、多摩動物公園のオオカミ12頭を5か月、524時間かけて観察しました。
結果は、人間と同じでした。社会的なつながりが強いオオカミ同士ほど、あくびがうつりやすかった。オオカミでこれが確かめられたのは、このときが初めてだそうです。
イヌについても、知らない人より飼い主のあくびのほうがうつりやすい、という研究があります。
どれも群れで暮らし、仲間の様子に気を配って生きる動物です。あくびの伝染は、共感と関わっているというのが有力な考え方になっています。
おまけ:見なくても、聞くだけでうつる
あくびの伝染には、目で見る必要すらありません。
2020年には、あくびの声を聞くだけでもうつるという研究が発表されています。そして音の場合も、やはり家族や友人の声のほうがうつりやすかった。
姿が見えなくても、相手が誰かを感じ取って反応している。なかなか律儀な仕組みです。
ただし、うつりやすさには個人差があります。あくびがうつらないからといって、相手を大事に思っていないわけではありません。ひとつの傾向として楽しむくらいがちょうどいいと思います。
明日、こう話せる
誰かがあくびをした瞬間が、そのまま出番です。
「あくびってさ、うつる順番があるの知ってる?」
たいてい「順番?」と聞き返されます。
「家族がいちばんうつりやすくて、次が友だち、その次が知り合い。知らない人のはあんまりうつらないんだって。気持ちの近さで決まるらしい」
そして最後にこれを足します。
「オオカミでも同じで、仲がいい同士ほどうつるんだって」
たぶん話しているうちに、どちらかがあくびをします。そこで話は完成です。
