歴史の年表に並んでいる「BC」と「AD」。
BCは Before Christ、つまりキリストが生まれる前のこと。ではADは何か。After Death、キリストの死後。私はずっとそう覚えていました。
違います。ADは、そもそも英語ですらありません。
「AD」はラテン語の Anno Domini
ADは、ラテン語の Anno Domini(アンノ・ドミニ) の略です。
意味は「主の年に」。annus(年)と Dominus(主)を組み合わせた言葉で、完全な形にすると「われらの主イエス・キリストの年に」となります。
死後ではなく、主の年。数えはじめの基準はキリストの誕生であって、死ではないわけですね。
表にすると、この2つの不揃いぶりがよく分かります。
| 表記 | もとの言葉 | 言語 | 意味 |
|---|---|---|---|
| BC | Before Christ | 英語 | キリスト以前 |
| AD | Anno Domini | ラテン語 | 主の年に |
同じ年表に仲良く並んでいるのに、片方だけラテン語。混乱のもとは、たぶんここにあります。
After Death だと、30年ほど行方不明になる
では、もしADが本当に After Death だったらどうなるか。
キリストが亡くなったのは30代とされています。すると誕生から死までの30年あまりが、BCでもADでもない空白期間になってしまう。
年表に穴が空くわけです。言われてみれば、まったく成立しません。
私はこの説明を読んで、ようやく腑に落ちました。間違って覚えていたというより、そもそも一度も疑ったことがなかったんですね。
おまけ:キリストは「紀元前」生まれ
もう一段、変な話があります。
この紀元を考えたのは、ディオニュシウス・エクシグウスという修道士です。525年、復活祭の日付表を作り直す仕事のなかで、キリスト生誕の翌年を元年と定めました。
ところが後の研究で、その計算がずれていたことが分かります。イエスが実際に生まれたのは 紀元前4年ごろと考えられている。
キリストの誕生を基準にした暦なのに、当のキリストは紀元前に生まれている。
おまけに西暦には、0年がありません。紀元前1年の翌年が、いきなり西暦1年です。ゼロという数の考え方がヨーロッパに広まる前に作られた暦なので、こうなりました。
千五百年前の計算違いと、当時まだなかった数字。その上に、今の世界中の年号が乗っかっています。
明日、こう話せる
歴史の話題や、年号の話が出たときが狙い目です。
「BCとADってあるでしょ。ADって After Death だと思ってない?」
たいてい「え、違うの」と返ってきます。
「あれラテン語で Anno Domini。主の年って意味なんだって。だいたい死後から数えたら、キリストが生きてた30年がどこにも入らないでしょ」
ここまでで納得してもらえたら、最後にもう一発いきます。
「しかも計算がずれてて、キリストが生まれたのは紀元前4年ごろらしいよ」
暦の名前になっている本人が、その暦からはみ出している。なかなか間の抜けた話です。
