宇宙飛行士は、宇宙で背が伸びる。
聞いたことはありましたが、半信半疑でした。大人になってから数センチも伸びるなんて、そんなことがあるのかと。
本当でした。だいたい1〜2センチです。
背骨のすき間が、押しつぶされなくなる
理由は骨そのものではなく、骨と骨のあいだにありました。
背骨は一本の棒ではなく、小さな骨が積み重なってできています。その骨と骨のあいだに挟まっているクッションが椎間板(ついかんばん)。軟骨でできた座布団のようなものですね。
地上では、ここが体の重みでずっと押しつぶされています。重力のない場所に行くと、その圧力から解放されて厚みが戻る。JAXAの説明によれば、ひとつの椎間板あたり、約1ミリ伸びるそうです。
1ミリなら大したことはなさそうですが、枚数が効いてきます。
- 首のあたり … 6枚
- 背中のあたり … 12枚
- 腰のあたり … 5枚
合わせて23枚。ざっと掛け算すると23ミリ、つまり約2.3センチになります。JAXAの言う「1〜2センチ」と、きれいに重なりますね。
なかには7センチ以上伸びた人もいるとのこと。ただし地球に帰れば、重力に押されて元どおりです。
同じことが、毎日あなたにも起きている
ここからが本題かもしれません。
この仕組み、宇宙でしか起きないわけではないんです。
立ったり座ったりして過ごす日中、椎間板は体重に押されて水分を失い、少しずつ薄くなります。横になって眠っているあいだに水分を吸い戻し、厚みが回復する。
つまり朝がいちばん背が高く、夜がいちばん低い。差は1〜2センチほどとされています。
これは研究の世界でも知られていて、身長を測る調査のなかには、日内変動による誤差を避けるため計測時間を午前10時から午後2時に固定した例があります。それくらい、きちんと動く数字なんですね。
学校の身体測定で「朝イチに測ってほしかった」と思ったことはありませんか。あれ、理屈の上ではまっとうな主張でした。
おまけ:「9センチ伸びた」は、取り消された
2018年1月、国際宇宙ステーションに滞在していた金井宣茂飛行士が、こう発信しました。
身長が9センチ伸びていた、と。しかも、たった3週間で。
これが大きな話題になります。地上での身長は180センチですから、9センチは5%の増加。無理もない騒ぎでした。
ところが翌日、本人から訂正が出ます。
ロシア人船長に「9センチは伸びすぎだろう」と怪しまれ、自分で測り直してみたところ182センチ。プラス2センチでした。
本人は「とんだフェイクニュース」と謝っています。
結果として、JAXAが言う1〜2センチの範囲にぴたりと収まりました。騒ぎになって、訂正されて、その訂正までニュースになる。なかなか見ない展開でした。
明日、こう話せる
身体測定の話題か、背が縮んだという話が出たときが出番です。
「宇宙飛行士って、宇宙で背が伸びるの知ってる?」
たいてい「骨が伸びるの?」と返ってきます。
「骨じゃなくて、骨と骨のあいだのクッション。重力で潰れてたのが戻るだけ。1枚1ミリで、背骨に23枚あるから合計2センチちょっと」
そして最後にこれを足します。
「実はこれ、毎日起きてるよ。朝と夜で1〜2センチ違う。朝のほうが高い」
明日の朝、鏡の前で思い出せる話です。測ってみたくなったら、起きてすぐがおすすめです。
