フクロウが、首をぐるりと回す。
動物園でも動画でも、あれを見ると笑ってしまいます。首だけがくるっと後ろを向く。愛嬌のある仕草だと思っていました。
芸ではありません。そうするしかないんです。
目が動かないから、顔ごと向ける
フクロウの目は、人間のような球ではありません。筒のような形をしています。
暗い中でわずかな光を集めるために、奥行きのある構造になっているのです。望遠鏡のようなもの、と考えると分かりやすいでしょうか。
ただし、この形には代償があります。大きくて長いので、頭蓋骨にはまり込んで固定されている。
つまり、目玉を動かせません。
私たちは顔を正面に向けたまま、視線だけを横に流せます。フクロウにはそれができない。横を見たければ、顔ごとそちらへ向けるしかないわけですね。
あのぐるりは、私たちが目玉をきょろきょろさせているのと同じ動作です。
首の骨は、人間の2倍ある
そこで発達したのが首です。
| 首の骨(頸椎)の数 | |
|---|---|
| 人間 | 7個 |
| フクロウ | 14個 |
倍です。骨の数が多いぶん、曲げられる角度も大きくなります。
一般に270度ほど回るとされます。後ろどころか、その先まで見える計算になりますね。
目でできない分を、首が丸ごと肩代わりしている。体の設計として、役割が振り替えられているわけです。
おまけ:それでも血管が切れない
ここで疑問がわきます。首をそこまでひねって、中の血管は大丈夫なのか。
人間の首はそもそもそこまで回りませんし、無理にひねれば血管を痛めます。脳へ向かう血管は、首の中を通っているからです。
この謎を調べたのが、ジョンズ・ホプキンス大学の医学チームでした。2013年に科学誌『サイエンス』で発表されています。
見つかったのは、血液をためる袋のような膨らみでした。顎の骨の下あたりの血管が、ふくらんで血をためられるようになっている。首をひねっているあいだも、そこから脳や目へ血を送り続けられます。
さらに補助的な血管があちこちでつながっていて、一方が詰まっても迂回できる構造になっていました。
目が動かない。だから首を回す。そのために骨を増やし、血管まで作り替えた。ひとつの不便から、体じゅうが設計変更されているのが面白いところです。
明日、こう話せる
動物園の話や、動物の動画を見ているときに使えます。
「フクロウが首をぐるっと回すの、あれ芸じゃないんだよ」
たいてい「そうなの」と返ってきます。
「目玉が動かないんだって。目が筒みたいな形で、頭の骨にはまってて固定されてる。だから横を見たいときは顔ごと向けるしかない」
そして最後にこれを足します。
「首の骨も人間の倍あって14個。血管も、回しても血が止まらないように特殊な作りになってるらしいよ」
かわいい仕草の裏に、体じゅうの事情がある。そういう話は、だいたい喜ばれます。
