カタツムリに歯はあるか。
そう聞かれたら、たぶん「ない」と答えます。あの柔らかそうな口から、歯が生えている姿は想像しにくい。
ところが、あります。しかも 1万本以上 です。
舌全体が、ヤスリになっている
カタツムリの口の中には、歯舌(しぜつ)と呼ばれる器官があります。
細かい歯がびっしり並んだ、ベルト状の舌です。種類によって数は違いますが、1万本を超えるものが珍しくありません。
この歯舌を前後に動かして、食べ物を削り取ります。噛みちぎるのではなく、削り落とす食べ方です。
葉っぱを食べたあとの跡が、かじった形ではなく、なめらかに削れた形になっているのはそのためです。目の細かいヤスリを、舌の形で持ち歩いているようなものですね。
コンクリートも削って食べている
雨の日に、塀やブロックにへばりついたカタツムリを見たことがあると思います。
あれ、休んでいるとは限りません。食べていることがあります。
殻の材料になるカルシウムを補給するため、コンクリートの表面を削り取っているんです。1万本のヤスリは、その硬さにも歯が立ちます。
子どもの頃、なぜ壁にくっついているのか不思議でした。まさか壁を食べているとは思いませんよね。
おまけ:すり減っても、後ろから生えてくる
硬いものを削り続ければ、歯は当然すり減ります。
歯舌はベルトコンベアのような構造になっていて、先端がすり減ると後ろから新しい歯が送り出されます。使い捨てのヤスリを、延々と補給し続けているわけです。
ちなみに近縁の貝であるカサガイの歯は、生物がつくる素材の中でも屈指の強度を持つことが報告されています。小さな貝の口の中が、材料工学の研究対象になっている。なかなかの出世です。
ひとつだけ注意
カタツムリを見つけても、素手で触ったあとはしっかり手を洗ってください。
寄生虫を持っている場合があるためです。観察するぶんには問題ありませんが、触ったらそのまま食事、というのは避けたほうがいい話です。
明日、こう話せる
雨上がりにカタツムリを見かけたときが出番です。
「これ、歯が1万本以上あるんだよ」
相手はまず「歯があるのか」で驚きます。そこに続けます。
「舌がヤスリみたいになってて、コンクリートも削って食べる。壁にくっついてるのは休んでるんじゃなくて、食事中」
数字が大きい話は、それだけで伝わります。
参考
- 軟体動物の歯舌に関する生物学の解説
- カサガイの歯の強度に関する研究の紹介記事
