「&」という記号。
商品名や会社名でよく見かけますね。読み方は「アンド」。ただ、あの形が何をかたどっているのかは、考えたこともありませんでした。
記号ではありません。文字です。EとTをくっつけて書いたものです。
EとTを、続けて書いているうちに
もとになったのは、ラテン語の et。「そして」を意味する単語です。
これを手で書くとき、EとTを続けて一筆で書く人が出てきます。それが繰り返されるうちに、2文字がつながって1つの形になりました。合字(ごうじ)と呼ばれるものですね。
古さもなかなかです。起源は古代ローマの筆記体までさかのぼります。
- 西暦45年のパピルスに、最初の例が見られる
- 西暦79年のポンペイの彫り文字にも、EとTを組み合わせた形がある
ポンペイが火山灰に埋もれたのが、その79年です。あの街の壁のどこかに、&の先祖が残っている。そう思うと、少し不思議な気持ちになります。
一度は、アルファベットの27番目だった
面白いのはここからです。
英語では長いあいだ、&がアルファベットの最後に置かれていました。AからZまで唱えたあとに、もうひとつ続く。つまり27番目の文字という扱いです。
ただ、これには困った問題がありました。最後に「アンド」と言うと、文がまだ続くように聞こえてしまうのです。
そこで、最後だけ言い方を変えることになりました。
エックス、ワイ、ゼット、アンド・パー・セ・アンド。
英語で書くと and per se and。「per se」はラテン語で「それ自体」という意味です。つまり「それ自体でandを表す、あのand」と説明しながら唱えていたわけですね。
この長い呼び名が、何度も繰り返されるうちに音がくずれていきます。
アンド・パー・セ・アンド → アンパサンド。
いまの綴りが定着したのは1837年以降だそうです。子どもたちの早口が、そのまま記号の名前になったわけですね。
おまけ:字形に、まだ名残がある
&をよく見ると、もとの形が透けて見えることがあります。
とくに斜体(イタリック)の&は分かりやすい。左側の丸みがE、右へ流れる線がT。フォントによっては、ほとんどそのまま「Et」と書いてあるように見えるものもあります。
ついでに言うと、9世紀ごろには他の合字がだんだん使われなくなっていきました。それでも、このetの合字だけは生き残っています。
理由は単純でしょう。「そして」は、いちばんよく書く言葉だから。
書く回数が多い言葉ほど、短く崩れて、やがて別の形になる。&は、その極端な例です。
明日、こう話せる
看板やロゴに&があるときが出番です。
「その&って、もとは文字なの知ってる?」
たいてい「記号でしょ」と返ってきます。
「ラテン語のetっていう単語。『そして』って意味で、EとTをつなげて書いてるうちにこの形になった」
そして最後にこれを足します。
「昔はアルファベットの27番目の文字だったんだよ。最後に『アンド・パー・セ・アンド』って唱えてて、それが訛ってアンパサンドになった」
記号だと思っていたものが、実は単語だった。看板を見るたびに思い出せる話です。
